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  • #9 僕の師匠 (3) Wim Schroeder

    こんにちは、高田崚史です。だいぶ春が近づいてきましたね。ヨーロッパは日が長くなってきましたし、暖かい日が増えてきました。日本でも北海道や雪国の方々は同じかもしれませんが、ヨーロッパの人の春への喜びというのは日本の都会に住む人とは比じゃないですね。春を感じると皆さんが嬉しそうに街を歩き、庭でBBQをはじめ、テラス席で食事をするようになります。僕はそんな姿を見ていつも「虫みたいだなあ」と思っています(笑)  さて、今日は僕の師匠シリーズ第三弾、遂に外国人になりました。実は僕の師匠シリーズはあと1回で終わりです。僕の15年くらいの馬術人生においては、師匠は次のBen Schroederを含めて4人です。丁寧に関係性を築いていただけたな、と嬉しくなります。  さて、Wim Schroederという人は2016年から日本代表のコーチを務めた人でもあります。東京五輪でもコーチでした。実は彼との出会いは日本馬術連盟の強化指定選手を選ぶ選考会で出会いました。この強化選手になったら、ドイツのショッケンメーレ厩舎で働きながら強化選手として競技に出る、ということでした。Wimはその選考中から、僕は強化選手になるべきではなく、もっとしっかりとした指導の下成長すべきだ、と選考員の枠を超えて話してくれました。彼の拠点にも連れて行ってくれたり、競技中の彼のチームメンバーにも会わせてもらいました。  その後、選考で落ちてしまった私はWimを頼ります。Wimは喜んで受け入れてくれました。彼が言ってくれた言葉は本当に嬉しく思っています。 「大切なことは人間性なんだ、それがないと人は成長していくことはできない。技術的に光るものと人間性を感じたので受け入れることにした。」  彼自身五輪にオランダ代表として出場し、日本代表のコーチになるくらいですから才能や技術はとびぬけています。そんな人がこんなことを言うとは…前回のブログで誠倫さんが言ってくれた「才能、環境、やる気」これを繋ぐ大きな力が人間性なのだと感じたのです。合理主義と言われるヨーロッパ人がこう言ってくれることが意外でもあり、同時に合理主義だからこそ人間的に合わない、とか関係性を作ることを拒絶している、みたいなことがスポーツの世界でも大きなマイナスになるのだと分かっているようにも思います。  馬との関係性作りについても彼は常々こう言っていました。 「馬を毎日毎日大切だと思って接しなさい。そうすれば、最後の大事な瞬間に馬がライダーを助けてくれる。彼らは必ず101%の力を持って応えてくれる。結果を出すというのはそういうことなんだ。」  こういった部分も、僕自身が彼の哲学や想いにすごく共鳴する部分でした。彼は本当に馬を大切に想い、人を大切に想うそんなコーチでした。一方では、想いはあるんだけど仕組みに落とし込むのが苦手だったり、継続的に計画を立てて人のトレーニングを組み立てるのは苦手だったりしました。その部分を、実は双子の兄でもあるBenと一緒に拠点を運営していくことで補っていました。次回の師匠シリーズ最終回では、そんなBenとの物語について書きたいと思います。 次回をお楽しみに!

  • #8 馬の師匠(2)増山誠倫

    こんにちは、高田崚史です。ドイツも暖かくなってきました。皆さんいかがお過ごしでしょうか。  さて、馬の師匠(1)を読んでいただいた方は(2)が次来るかな、と予想していたと思います。おそらくこのシリーズは(4)まで続きます。第2回は増山誠倫さんです。第1回で書いた加藤大助さんとは結局7年間の付き合いでした。この終わり方も僕の中ではここで書きたいのですが、とにかく非常に円満でした。大きな感謝と共に、もっと障害馬術を極めるうえでの師匠が欲しい、と思って出会ったのが誠倫さんです。この誠倫さんは、現在でも現役で今年のWC Finalにも出場する一流選手です!  誠倫さんの凄いところは、その姿勢の美しさ。スポーツとしての馬術は才能が重要である、ということを痛いくらいに感じさせてくれる人です。そしてとにかくストイック。身体づくり、馬の飼料…こだわると決めたらとことんこだわる人です。僕はそんな師匠の背中を見て、身体づくりをはじめあらゆる小さなことに気を配るようになりました。結果としてヨーロッパに行く前の基礎を教えてくれた人だと思っています。  誠倫さんは今でも僕の師匠であり憧れの選手なのですが、出会い、そして僕を誘ってくれたエピソードが僕にとって強烈なのでそれを書かせてください。  誠倫さんは小山乗馬クラブという栃木県小山市にある乗馬クラブのオーナーさんなのですが、誠倫さんに出会った頃の僕は加藤さんの下を離れるか1年以上迷っていて関東の乗馬クラブを探していました。その時、誠倫さんは僕にこんな言葉をかけてくれました。  「スポーツにおいて重要なことは3つある。才能・環境・やる気だ。高田君は才能とやる気は揃っている。あとは環境を整えることなんじゃないの?」  この言葉によって、僕は自分の目標にとって最適な環境を選ぶことの重要性を感じました。この言葉はその後欧州に向かう僕にとっての指標になりましたし、若い選手と向き合うことになってからも伝えるようにしてきました。残念ながら僕が例えば馬術部で関わってきた選手の多くはそのどれかが欠けていました。一番勿体ないのはやる気がないことですが、環境を整えることに興味を持てない、勇気を持てない人が一番多い気がします。  多くの人は才能で挫折していると自分で思っています。ただ、僕がプロになれた馬術・乗馬というところにフォーカスしてみると、60%以上のケースは才能以外の部分で躓いています。新しいことを初めて一定期間経つと誰しも成長はどこかで止まってしまいます。そこで才能が足りない…と思ってしまう人がいます。違います。そこで足りないのは、やる気であり環境です。  自分よりうまい人に私は才能がないんです、と言ってみてください。多くの人はにっこり笑って言うと思います。「違います」と。これはある意味残酷な言葉でもあります。才能の見えるところまでやってませんよ、ということです。もしかしたら、これはスポーツに限らないことなんじゃないかな、と私は思っています。自分が成長しようというやる気を持ち、環境を整えること。この大切さを誠倫さんから学びました。  読んでいただきありがとうございました。次回をお楽しみに。

  • #7 馬の師匠(1)加藤大助さん

    こんにちは、高田崚史です。ドイツは寒いです。オフィスでもマフラーをして過ごしています。ドイツ人は寒さに強いらしい。半袖の人すらいます。  さて、今日は僕の馬術人生の師匠について語っていきます。これ、皆さん絶対に他言しないでくださいね。赤裸々に語りますので(良い話ばかりではないかも)。一人目の師匠は、加藤大助さんです。昨年銅メダルを取った、総合馬術のオリンピックに出場したこともある元選手です。僕が中学1年生で乗馬をはじめ、中学3年生の時に馬術に本格的にのめり込むきっかけとなった人です。  中学3年生で競技生活をはじめた僕は、加藤さんが連れてきた一頭の馬に出会わせてもらいました。アトレーユ、という馬です。この馬ですが、まじで難しい馬でした。乗りこなすのが難しく、跳ねる・暴れる(1鞍で2回落ちたこともある)、厩舎では噛んでくる、障害前で止まる。今の僕が触ったら分かりませんが、今の知識レベルで言うと、良い馬ではありませんでした(ごめんね)。  とっても苦労した僕は、競技会に行くのが怖いレベルにまでなってしまいました。今でも金曜日になると競技会が憂鬱で、月曜日のジャンプ発売を生きがいにしていた覚えがあります。この苦労した経験は後に活きていると思っています。その時にアトレーユのことを悪者にせず、恐怖に震えながら一緒に努力したことは今でも覚えています。結局、アトレーユは結局僕を全日本ジュニア選手権の舞台に連れてってくれました(ちなみにやっとの思いで初出場したそのクラスで優勝したのは神瑛一郎です!)。  そんな後、#2や#3で書いたような名馬ラストドロップに出会わせてくれたのも加藤さんです。さっき書いたように、先に苦労して、その後名馬に出会えた僕は、自分の身の程を知っていました。おかげで天狗になりすぎず、一頭の馬と丁寧に向き合ってきたと思います。これも加藤さんの凄いところではないでしょうか。その時の自分に最適な馬を巡り合わせてくれた人です。良縁を運んでくれる人ほど、自分にとって吉な人はいませんよね。僕も多くの人に良縁を運べるように、良い人と良い人を繋いでいきたいと思っています。  さて、加藤さんについてお話しするときに、必ず思い出すことが加藤さんの口癖です。  「願ったら叶うと思うか?叶わないと思うか?」  加藤さんは酔うたびにそう聞いてきました。そして、僕は常に「叶うと思います」と答えてきました。何を隠そう、それが正解かな、と思ったのが1つ。あとは、叶わないと思います、とは言いたくなかった。良い意味で2択で聞いてくれたから、叶う、と答えたいと思ったのです。  結果として、馬術人生で僕は多くの願いを叶えてきました。僕が15歳で乗っている姿を見たとしたら、その人は僕がこんなにたくさんの夢を叶えるとは思わなかったでしょう。東京オリンピックという願いは叶わなかったけど、オリンピックはこれからもあります。僕は、まだ叶うと思っています。  読んでいただきありがとうございました。次回をお楽しみに。

  • #6 馬が合う不思議

    こんにちは、高田崚史です。    前回は、ほんとに徒然なるままに、という感じでしたね。そんな感じで力を抜いていきましょう。今僕はドイツに住んでいます。寒いです。今一番寒い時期です。  ドイツは食事が美味しくない。ビアーを片手にソーセージとポテーイトーを食べます。ほぼ毎日同じもの。会社の食事はすべて茶色。色が濃いのに無味。ドイツ食事の悪口を書くと筆が進みます。日本は幸せです。  もしかしたら多くの人は知っている話かもしれませんが、僕と当社代表神との関係性は、胃袋を掴まれた、と言って過言ではありません。神の近くにいると美味しいものが食べられます。僕は2018~2021年までオランダにいたのですが、同時期1年間くらい神もドイツにいました。  僕はドイツ寄り、彼はオランダ寄りに住んでいて車で1時間くらい。彼の家で食べた豚の生姜焼きは僕の人生ベスト5くらいの食事でした。オランダもドイツに負けず劣らずご飯がまずく、補正がかかりすぎていたとはいえ、めちゃくちゃ美味しかったです。鍋でご飯を炊く姿にも感動しました。  もちろんそれ以前からお互いの存在は知っていたのですが、それをきっかけに通うようになり、試合がない週末はほぼ毎週通っていました。その中で、馬術界の課題ややりたいことが出てきたので、ある意味Horse Value誕生の地です(地名は忘れました)。  ちなみに、僕と彼が「馬が合う」のはどうも不思議です。なんだか方向性が違う気がする僕らは馬に関することだと意見がほとんど同じです。たくさん自己分析も、神の分析もしていますがイマイチ分かりません。分かる人は教えてください。  確実に言えるのは、いい加減さは似ているかな。なので、Horse Valueでも周りのメンバーに諭されて事業をやっています。なので、このウマットに関しても甘やかさないでください(笑)  馬が合う、ということで言うと、僕の好きな馬と神の好きな馬は全然違います。彼は少しクレイジーな馬、僕は冷静な馬が好きです。女性の好みが違うのも、仲良くできている秘訣です。僕は、乃木坂系、というか乃木坂が好きなのですが(推しは結婚したらしいので名前を記憶から消しました)彼はTWICE系が好きらしいです。  そんな2人ですが、これからもよろしくお願いします。こういうのが皆さんにとって面白いのかな?色々フィードバックください。  読んでいただきありがとうございました。次回もお楽しみに。

  • #5 馬とはできるのに。

    こんにちは、高田崚史です。  今日は何を書こうかな…。僕の師匠は毎日メルマガを書いています。凄すぎます。  僕の師匠は、武術をやっています。その影響で僕も武術をやっています。中心道という武術です。師匠の師匠にも習っているわけです。この武術は、体感覚と普段のコミュニケーションを同時に学ぶコミュニケーション武道です。  例えば、相手と組んで倒すんですが、力いっぱいやりたくなっちゃう。相手は抵抗します。こちらが力を抜いてタイミングを合わせると、あら不思議、相手は倒れるしなんだか笑っちゃう。やった⇒やられたの関係性じゃなくなるんです。  こういった体感をコミュニケーションに活かしていきましょうー、というわけです。僕らもホースミラーリングセッションで似たようなことをやっているつもりです。馬との関わりって、体感です。理論的には説明できないこともある。その体感を人とのコミュニケーションに活かす。この武術を学ぶとすごく勉強になります。  身体の使い方は中心、中心。丹田という身体の中心に意識を向けると末端が緩む。ちなみに、僕は身体が超硬くて。稽古に行くといつも笑われちゃうくらいです。馬にも迷惑かけてたぞ!と言われます。  確かに、その通り。  脱力の先に答えがあるのに、ぶつかってばかり。  この稽古に行って馬に乗ると、感覚が変わります。馬との関係性を見直す良いきっかけになります。稽古ではできなかったことが、馬の上だと感覚的に理解できることも。人間って面白い!結局意識の持ち方1つ。  さっきお話ししたことも一緒。倒された、その「事実」に怒ってるんじゃない。倒したった感にイラっとしているんですよね。意識の持ち方次第で相手の反応は変わる。  馬とはできるけど、人とはできない。特に女性と組むとさらにできない。ああ、人と人とでもこの幸せを感じられたらなあ。きっと共感してくれる人もいるはず。  馬との関係性についてお伝え出来るつもりだけど、それも勘違いかも。そうやって「プロだからこそ」疑って、疑って常にアップデートしていきますよ。楽しみにしていてください。皆さんの中には色々な道のプロがいるでしょう、色々教えてください!  読んでいただきありがとうございました。次回もお楽しみに。

  • #4 馬は責めない

    こんにちは、高田崚史です。  はっきり言います。前回、前々回がこの連載のクライマックスなのではなかろうか…。その通りです!  まあ、気を取り直して書いていきます。  馬との関係性で失敗したことはありますか?という質問を自分に投げかけてみようと思います。良いことばかり書いていると、自慢しているみたいですしね。  もちろん、あります。ありまくりです。  でも  失敗のまま、終わらなければ、失敗じゃないのさ。  と思っています。僕は世紀の大失敗をして馬を殺しかけたことがあります。乗っている馬がどうしても言うことを聞かなくて、柵に向かって思いっきりお腹を蹴ったら柵を跳び越えてしまい…その柵の向こう側は坂道で10mくらい雑木林!馬と一緒に転げ落ちた僕は下の川に馬と落ちてしまいました。  当然馬は大怪我。その時に学びました。感情に身を任せて馬を扱ってはいけない。  その後、1週間以上泊まり込んで馬の面倒を見て、その馬は3〜4カ月ほど休養を経て普通に競技会に出られるようになりました。  そういう失敗をすると、今度から失敗をしなくなるわけではありません。でも小さな失敗ですぐに自覚できるようになります。もう一つ、申し訳ない気持ちは感謝になります。馬の前だと。人は、責めてくるけど、馬は責めてこないし。  人の失敗を見て被害を被って大きな怪我をしたとしても、心から責めない自分になれたら、きっと周りから感謝される人になれますよね。馬から学んでもなかなか難しい。  その馬の死に目にも僕は逢えませんでした。そいつの名前はリンリンリン。名前は可愛いけど鉄の馬でした。元競走馬、ブライアンタイムズとシーズグレイスの産駒。中央33戦4勝。超絶強気で、なんでも跳ぶ、人も吹っ飛ばす。  だから雑木林にも転落する。その後痛そうだったけど顔は平気。たくさんのことを教えてくれた馬でした。自分を育ててくれた馬も大切だけど、自分と一緒に育ってくれた馬も格別なんですよね。  読んでいただきありがとうございました。次回をお楽しみに。

  • #3 馬とひとつ

    こんにちは、高田崚史です。  今日は前回書いたラストドロップについての思い出を書いていたときの思い、とか書けなかったことを書いていきたいと思います。ラストドロップ、トビーの美しい話を書いたけど、実は結構頑固なやつだったらしいぞ、ということを書いていきます。  トビーは前もお話ししたように、本当に結果にこだわる、戦う馬でした。やっぱり気が強い部分があったんでしょうね、そして1対1の関係性の馬でした。  僕は、馬にも色々な馬がいると思っています。社交的な馬、1対1を好む馬。トビーは間違いなく1対1を好む馬でした。あと、可愛い子が好きな馬でした(嘘みたいなホントの話)。僕が可愛い子とは楽しそうに話していたので、良い人だと思った説もありますけどね(笑) このように、馬の行動はいくらでも解釈できます。だけど、どうもそうとしか思えないよね、ということもあるので面白いです。  周りの人にトビーのことを聞くと、王様だった、と聞きます。ご飯は一番にもらえないと嫌、部屋からは出たくない、人を乗せるのも嫌(特に嫌だった人もいたみたい)。それでいて、僕の前では前掻き(ご飯を食べたくておねだりすること)も一切しなかったのでどれだけ二面性があるんだよ、という話ですよね。  僕はトビーの死に目には会えませんでした。2020年はコロナまっさかり、僕はヨーロッパで活動していました。日に日に脚の状態が悪くなって、立ちあがることが難しくなったと聞いていましたが何度も持ち直したそうです。壁に倒れてしまって傷だらけになっても立ち上がっていたと言います。ちょうど僕がチェコで試合に出ている日に、彼は亡くなりました。  最後に彼が僕を見ることができなかったのは、今となっては残念で仕方ありません。夢のために戦い帰れなかった僕は、2年くらい経ってやっと涙を流すことができました。  誰もが、彼は僕と出会えて幸せだったと声をかけてくれました。そのくらい、愛された馬でした(皆にとってはわがままな王様でしかなかったのに)。そのくらい、関係性が美しく見えたのだと思います。僕は、彼と出会えて幸せで、彼は僕と出会えて幸せでした。そこに、僕の原点の馬と人は心が一つ、と思う所があります。  I in You, You in I.  この言葉と共にトビーの瞳を想います。  皆さんにもそんな出会いがあるように…僕は活動していきたいです。  読んでいただきありがとうございました。次回もお楽しみに。

  • #2 思い出の馬、ラストドロップ

    こんにちは、高田崚史(りょうじ)です。  早速ですが、今日は僕の最愛の馬、ラストドロップについてお話しします。きっと第2回くらいで書いておかないと怒られそうなので早めに取り上げておきます。  彼はオーストラリア生まれ、2007年に僕と出会い、2020年に亡くなりました。愛称はトビー。目が泣き顔なのが特徴でした。クライスデールという馬車馬の血が入っていて脚が短く胴が少し長いのが特徴でした。  彼は本当にスーパースターの馬で、とにかく障害に脚を当てない。結果、というのを知っている馬でした。障害に脚を当てたらいけないんだ、ということをいつも超絶忠実に守る馬でした。そんな彼のお陰で2010年、僕は全日本ジュニア選手権に勝ちました。同じ年にヤングオリンピックの日本予選も勝ってその年世代で1番の人馬だったと言えます。  馬にプライド、という言葉があると感じたのは、この馬のお陰です。さっきも話したように本当に結果を知っている馬、そしてそこに誇りを持っている馬でした。大切な試合というものを人と同じように感じ、同じように気合を入れる、そんな馬でした。  本当に人懐っこい馬(これは僕に見えてただけだったらしいと後に知りますが)で、穏やかで暴れない馬でした。トラクターが怖くて逃げる、という所以外は勇敢な馬でした。  ただ、脚が悪くて、若い時からよくつまづいていたのですが、歳を取るにつれてそれが顕著になりました。どんどん歩幅が短くなり、歩幅が短くなると当然勢いをつけられないので跳ぶのが苦しくなっていきました。  今でも僕は覚えている試合があります。全日本選手権の予選、場所は世田谷の馬事公苑。僕は1日目は上位、しかし2日目は明らかに馬の調子がおかしかった。それでも少しでも前に進もうとするトビーを勇気づけながら、なんとかゴールを切りました。苦しさが乗っていてここまで伝わってきたのは初めてで、これだけ無理させたのが申し訳なくて涙が溢れました。競技場を出たらすぐに降りて一緒に歩いて帰りました。  競技に出たことある人なら分かる、馬事公苑の厩舎へのトンネル。歩くのは辛そうだったけどトビーは誇らしそうだった。負けなかったぞ、という思いを感じてまっすぐ前を見て歩いていました。  厩舎について、予選は通過していたけど最終日は棄権すると決めました。僕の人生の決断で最も迷いのない瞬間でした。勝つことの喜びも、諦めることの清々しさも教えてくれたのがトビーでした。  どの馬もそうですが、彼のお陰で僕は今ここで皆さんに伝える立場にいます。そしていつか、僕も誰かにとってのトビーになれるようになりたいと思っています。  読んでいただきありがとうございます。次回をお楽しみに。

  • #1 馬との時間を大切に…

    こんにちは、一般社団法人Horse Valueの高田崚史(りょうじ)です。  まずもって、ウマットに入会していただきありがとうございます。 これから馬と仲良くなる道を一緒に追求していきましょう。  この「馬と人」という連載では、僕の馬との過去を振り返りや、僕の現在、最近の気づきを多く入れていきます。テキスト・動画・毎月の勉強会では、馬と仲良くなる秘訣を話していくので、そことは少し一線を画した連載にしていきます。  かなり徒然なるままに、という感じになりますがゆるりと読んでください。  第1回は何を書こうか、というところで、最近あったことを書きます。僕の卒業した馬術部である一橋大学馬術部が消滅してしまう、という大事件についてです。  そもそも一橋大学馬術部は、自分達の大学に馬場があったわけではなく乗馬クラブを間借りしていました。そんな中、部員数がどんどん減少傾向を辿り…3人となり、2人となり、続行不可能となったようです。  すごく悲しいことですし、少人数でも続けたら良いのに。と思うのですが、確かに作業が辛かったり先が見えなかったりするのでしょう。すべてを捨てて馬に、という時代でもない中で両立が大変なのでしょう。  説得する中で、僕の見えている馬の魅力、そのかけがえのなさと、学生たちが見えているものは違うのだと気づきます。僕自身が今仕事に追われて、直接馬に触れることがないからこそ余計思うのかもしれません。  ここから言えることは、馬と関わることができている人は幸せだということです。この時間を大切にしてほしいし、その大切さを知っている人を増やしていきたいと本当に思います。ウマットはそういう人が集まる場所にしていきたいですね。  同時に、そんな幸せを噛みしめることができれば馬は愛情を示してくれます。これは僕が最も馬について考える時に基礎としているミラー効果によって、自明のことです。  一緒にいられることの幸せを感じる、そんなことを人間同士で言ったら照れくさいですが馬と人、という関係性だからこそ、迷いなく言えるのかもしれません。そうなっていく方法や考え方をウマットという場所でお伝えし、皆さんの実践から学んでいきたいと思います。  読んでいただきありがとうございました。次回をお楽しみに。

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